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2023-01-08

【空想装丁図書館2022】駅前旅館

毎年恒例の「空想装丁図書館」。好きな本を選んで自由に装丁する展示も3年目を迎えました。
今回は「旅」がテーマということで、古本屋さんで見つけた井伏鱒二の「駅前旅館」を選びました。

時は昭和三十年代、上野駅前の団体旅館を舞台に繰り広げられる、宿屋稼業で明るく強かに生きる人たちを描いた小説です。修学旅行やら社員旅行やらで行き来する大人数の観光客や気風と気骨できっちり稼ぎ楽しむことも忘れない宿屋の人々と、とにかくワイワイと人々が行き交う話。なので、リソグラフ多色刷りでガチャガチャと賑やかなデザインで制作しました。

見開きは宿の格子戸をイメージしています。こちらもリソグラフ印刷。

賑やかで陽気な宿屋の面々がかず多く登場しますが、その中にあって主人公は少し翳りを帯びたところのある人物。普段は強気なくせに「ここでもうひと押し行っちゃえよ!」という場面でいまいち踏み出すことのできないところがもどかしくも愛すべき男性です。終盤に出てくる彼の過去にまつわる独白から、裏表紙は右下に二匹の鯉を描きました。よかったらぜひ小説を読んでみてください。

クラフト紙の風合いやリソグラフのズレを活かした、渋みを持ちつつ賑やかで楽しげな装丁に仕上げました。


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