2022年の空想装丁図書館では、テーマ課題のほかに自由制作もありました。
というわけで長らく作りたいと思っていた中島らもさんの「アマニタ・パンセリナ」。学生時代に買った文庫がだいぶボロボロになっていたこともあり、ハードカバーに設えました。らもさんの劇団「リリパットアーミー」が大好きだったので、その熱で買った思い出の一冊です。
タイトルの「アマニタ・パンセリナ」はベニテングダケの学名。いわゆる毒キノコです。らもさんによるドラッグ・薬物アラカルトの軽いエッセイ・・・・と思ったら、とある一節から、ドラッグを介してらもさんと仲間たちの出来事や心模様へと内容が変化していきます。社会の中で生きることを上手くこなせないけれどなんとも愛すべき人たちの姿がとっても好きで、繰り返し読みました。文中、薬を介した自失を「子供のくるくる遊び(バットにおでこをつけてくるくる回る、あれです)」だと語る文章が印象的だったので、子供の落書きのようなタッチでベニテングダケと芥子の花のブーケを描きました。
表紙と見開きは子供の服の柄のような水玉模様。タイトルの文字はちょっと溶けがちな怪しい雰囲気です。色はできるだけ鮮やかにして、楽しげだけどちょっと怖い雰囲気にできればと思い、制作しました。
簡単に善悪だけで割り切れない、人間という生き物のかわいさや哀しさが染みるように伝わるエッセイです。この本を読むと「優しい」とはどういうことか、優しさというものがどんなに大事かを感じることができます。おすすめの一冊です。
合わせてらもさんの「いいんだぜ」という曲、こちらもおすすめです。
なんとかして聞いてみてください。