
2021年に始まった「ZINEフェス吉祥寺」を皮切りに、ZINEと呼ばれる自主制作の冊子を売るイベントに出まくっております。2025年11月現在、私の奈良をテーマにした制作はほぼ全部ZINEです。
雑貨もいろいろ作ってとても楽しいのですが、冊子の形にすると文章で率直に気持ちや考えを乗せることができるので、ZINEという手法は私にとっては一番作りやすい表現です。
ZINEって何?と聞かれることが多いのですが、和訳すれば同人誌です。内容を決めるのも、レイアウトも印刷も売る場所も売るのも全部自分が決めて自分でやる冊子のこと。ほらね、同人誌でしょ?
売る場所はいろいろあって、ZINEを展示販売するイベントに出したり本屋さんに置いていただいたり。イベントも委託したりフリーマーケットみたいにブースを構えて自分で出展したりと形体は様々です。その中でも私は自分でブースを出すイベントにたくさん出ています。「出過ぎ」と言われることもあります笑
ZINEフェス吉祥寺を主催される方が吉祥寺に限らず全国各地でZINEフェスを開催なさる事が増えた、とか別の方が主催するイベントも楽しそう、ということで、あちこちで奈良のことしか言わないZINEを持ち込んでは奈良奈良言っております。場所としては浅草、横浜、浦和、川越、松戸、大磯、分倍河原、東池袋、神戸、京都。奈良でも出店したことあります。近々大阪や山梨、茅ヶ崎も行きます。そりゃ出過ぎって言われるわ笑
そんな活動を続けていつの間にか4年の月日が経っております。最初の数回は買ってくれる人がいるのか甚だ疑問でしたが、毎回思った以上にいます。私の場合は1人でも買ってくれる人がいれば「思った以上」です。だってよく考えてみてください。出版経験一度もない人が唐突に自作の冊子を小さいブースで販売して、それが本当に売れるんです。1冊売れたらまさかのマジかでしょ。瓶に手紙を詰めて流してみたら意外と受け取って読んでくれる人がいた!みたいな驚きが毎回あって、それが楽しくてイベントに出ています。
受け取り方は人によって様々で、それもまた面白いです。なんとなく、地域によって大まかな傾向はあります。
東京の会場だと奈良や関西圏のご出身の方や大学が奈良だった、という方。東京に移住している奈良・関西出身者はやっぱり多いみたい。関西圏の会場だとなかなかの高確率で奈良好きな方に会えます。遠足や修学旅行で奈良に行った経験があるから馴染みがあるんでしょうね。ちなみに私の体感では奈良を好きな神戸マダムが結構多い。
奈良の話に惹かれて手に取ってくれる方の他に「自分もZINEを作ってみたい」という目的で読んでくれる方が多いです。東京・関西の会場でもそんな声を聞いたし、特に東京以外の関東会場で「ZINEというものを知りたい」と話す方がたくさんいました。
ZINEとはなんぞや、どうやって作るのやらという声が気になったので、私の思うZINEについてのあれこれを書いたフリーペーパーを作ってはイベントのたびに配る、ということを始めました。A4の紙に自宅のプリンタでコピーしたものです。

↑これが表紙。最近のZINEは書籍と見紛うほどの立派な装丁が増えていますが、全て自分で決めるメディアであって誰かから依頼を受けて作るものではないので、体裁はなんでもいいんだよー、という話をしています。ホッチキスでばちんと留めたもの、折っただけなどの気軽なZINEは実はいっぱいあります。

中面では、私が今まで見てきたZINEを参考にして、どんな内容のZINEがあったかを書いています。町を撮り続ける人もいれば道端に置かれた三角コーンをひたすら載せる人もいます。架空のCDレビューを書き連ねる人もいるし、日記を綴る人もいます。「マイノリティ」という立場ゆえに生きていく中で積もっていった思いを形にする人もたくさんいます。仕事を続けていくことにつまづいた人の心の吐露、失った家族への思い、離れたい家族への思い。私みたいなとある町を異常に愛する余所者の話。こうして書き並べるだけでも実に多様。
テレビのようなマスメディアを眺めていると、世の中の大多数の人たちはこれといった強い特徴、趣味や偏愛などはなくスムーズに摩擦なく日々を過ごしているのかしらと私はついつい思いがちになります。会社勤めをしていると尚のことその思いを強くします。私が何事にも無駄な思い入れを持ちすぎなのかな、とか、無難な平均になれない私は子供じみててあかんのかな、とか。
ところがZINEの世界をちょっと覗いてみるだけで、「何だ、妙ちきりんな人って実在するじゃん、しかもかなりたくさんいるじゃん」と実感できて、何だかホッとするんです。
何の益にならなくても、何の役にも立たなくても言わずにはいられない、描かずにはいられない衝動を抱えた人は一定数いる。そんな人たちに「その衝動は形にしていいんだよ」と伝えることができたらいいなと思ってイベントに出るとほぼ必ずこのフリーペーパーを配っています。
ZINEを作る時にも同じ思いを絵や言葉に載せているかもしれません。私は奈良への愛着を形にしたくて制作を続けていますが、見てくれる人に特に奈良へ行くことを勧めるわけでも奈良好きになって欲しいわけでもありません。(奈良の人ごめんね。)それよりも「自分の見えているものだけがこの世の全てではない、ということを知るだけで毎日が楽しくなる事があるんだよ」とか「ほんのちょっと目先を変えるだけで、今いる場所を一瞬離れるだけで呼吸がしやすくなることもあるんだよ」みたいなことが伝わったらいいなぁと思って奈良奈良言っているのですが、ZINE作りや出店が増えた今は「胸の内に渦巻くものは形にしていいんだよ」「それは“きちんとしたもの”でなくてもいいんだよ」ということも一緒に伝えられたら嬉しいと考えています。
そうして作ったZINEを手に取ってもらえる場が最近は頓に増えました。人と話す事がしんどくてZINEにした人なら委託という形で参加できるし、書くだけじゃ足りない、抑えられないという人は出店ができる。委託でも出店でも「なんだか雰囲気良くていいな」と思ったところにひとまず出しちゃうでもいい。ちなみに私は売り方問わず主催の方や会場の感じが「なんかいいなー」だけで決めてます。
偏愛と衝動を練りに練って形にするので偏りしかない仕上がりになるのは当たり前のことです。それでいいし、それがいいんだよ、ということが1人でも多くの人にゆっくりでいいから伝わればいいなと思います。






